11月1日に発行した社協だよりえがおNo.105で紹介した今月の一冊を、このブログでも改めて紹介したいと思います(^^)♪
『治りませんように べてるの家のいま』
著者/斉藤 道雄 出版社/みすず書房
べてるの家は、1984年に設立された北海道浦河町にある精神障がい等をもつ当時者の地域活動拠点です。生活共同体、働く場としての共同体、ケアの共同体という三つの性格を持っていて、精神科病院とも連携しており、100名以上の当事者が地域で暮らしています。
この本は、著者であるジャーナリストの斉藤氏が10年以上にわたり、べてるの家を取材し、そこで暮らす人々のこと、生活するなかで大事にされていることなどが綴られています。
べてるの家では、自分の病状や苦労を語るミーティング、当事者研究を何よりも大切にされており、本の中で、「話をすることでみなさんは『苦労』を取り戻す」と表現されています。読み進めるうちに、これまでは保護され代弁される存在としてしか生きられなかった患者としての人生を抜け出して、一人ひとりの悩み、自らの抱える生きづらさ、苦労を語る言葉を取り戻すことを目標にしているということが分かります。また、『苦労』を取り戻して言葉にすることで、同じ場所で生活する仲間とつながり、共有し、支え合う姿が描かれています。
他にもこの本には、精神科医療を見つめなおすようなことにも触れられており、治す治療をするのではなく、本人にスポットライトをあてて自然体でいられるような医療を大事にされていることが書かれており、それは私の考えを見つめなおすことにもつながりました。自分の価値観を押しつけていないか、相手の思いを心で受け止めているか等、普段の生活を振り返ることができました。このスペースでは書ききれない程たくさんのメッセージが詰め込まれている一冊です。 (みぞくち)