今月の一冊

広報紙えがおNO.107に掲載した「今月の一冊」をこのブログでもご紹介します。

タイトル「隠された貧困~生活保護で救われる人たち~」

著者/大山典宏  出版社/扶桑社新書

著者は、ケースワーカーなど社会福祉の専門職として、生活保護に携わってきた経験を基に複数の本を執筆されています。

近年、メディアで生活保護について取り上げられる機会は増えてきています。しかし、そこに登場するのは、多くの人が共感する、わかりやすい困窮者であって、都合の悪いもの、簡単に説明がつかないものを切り落としているのではないかと著者は訴えます。

この本は実態をより多くの人たちに理解してもらう必要があるとの思いで、経済的に苦しい状態にありながら、声を出せない人たちにスポットを当て、その実態をつまびらかにしています。

経済的な困窮から家族のために万引きを繰り返し、刑務所出所後、家族からの信頼も変える家も失った高齢女性、転校後のいじめをきっかけに非行にはしり、薬物に手を出し、家族も友人も失った男性などです。

その方たちに共通しているのは、経済的に困窮しているだけでなく、様々な社会問題を背景として、家族や友人、そして社会などとの関係が切れてしまっていたということです。さらにその困難な状況を脱していくうえでは、その人を受け止め、認めてくれる人や機関の存在が大きな力となっていることが見えてきました。

また、著者は、社会の中で何か問題が発生した時に、最初に矛先が向かうのは貧困に苦しむ人たちだといいます。その人の課題解決に向けた支援を行っていくと同時に、その背景にある社会問題に目を向けなければならないと指摘しています。

この本を読んでいく中で、様々な課題を抱えた方を支援していくうえでの基本的な姿勢や個別的な支援と同時に、社会へのアプローチの必要性など、たくさんのことに気づかされました。

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