社協だより「えがお」No.120に掲載している今月の一冊を紹介します。
『14歳からの戦争のリアル』
著者:雨宮処凛(あまみや かりん)
出版社:株式会社 河出書房新社
この本には、著者の雨宮処凛さんが、戦争をそれぞれの立場で体験された8人の方に取材された内容がまとめられています。イラク戦争に参加した元アメリカ海兵隊員、太平洋戦争時、南洋のトラック島で多くの仲間を餓死で失った元軍人、自身が戦場出稼ぎ労働者となって、イラクに潜入したジャーナリストなど、どの話からも緊迫した現地の様子が伝わります。
そして、戦争は現地だけで起きているのではなく、イラクでは、劣化ウラン弾の影響で生まれた時から重い病気や障がいをもって生まれてくる子どもがたくさんいること、イラク戦争から帰還した兵士は、PTSD(心的外傷後ストレス障害)で苦しんでいる人が多く、帰国後の自衛隊員の中からも自殺者が出ていることなど、尊い命が奪われ続け、負の連鎖が続いている現状が書かれています。読み進めていく中で、2003年から始まり今も混乱した状況が続いているイラクのことを、テレビの向こう側の出来事として捉えてしまっていた自分に改めて気付かされました。集団的自衛権についても詳しく説明されていて、決して遠くの国で起きていることではないという危機を感じるとともに、このままではいけないという思いが溢れました。戦後70年、たくさんの眠れぬ夜を過ごす方々がいらっしゃることに思いを馳せ続け、武力に対して武力で解決しようとしていることを改めて考え直さなければならないと思いました。
本の中で語られている方の言葉にもありましたが、自分にできることは、知ること、そして「自分だったら」と考えること。そのことが、政治や法律の問題を考えることにつながり、それが生きづらさや自分のまわりの生きづらさを抱えた人のことを考えることにつながっていくと思います。